忖度しない、がつきの記録

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「ボルゴグラードの忖度」でポーランド戦を語るのはまだ早い。

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いかにもこのブログの大タイトルに合う試合が起こってしまった。先日のW杯の日本とポーランドの試合だ。通称「ボルゴグラードの忖度」とも言われ始めている。

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6月28日日本時間23時キックオフ。グループHの最終戦で勝ち点4の日本代表は勝ち点0のポーランドとの対戦になった。

W杯前での評判は、FIFAランク8位のポーランドに対し、同ランク61位の日本代表は苦戦を強いられるというのが大方の見方だった。しかし、初戦で同ランク12位前回大会ベスト8のコロンビアに2-1で勝利すると風向きは大きく変わる。続くセネガル戦も2-2で引き分け、試合が始まる前は暫定でグループ1位をキープし、サポーターの期待を大きく背負って第3戦を迎えることになった。

 

スタメン6人を入れ替えだけではない敗因

ここで、試合前の状況を整理する。

グループH(勝ち点、得失点差)

1位 日本(4、+1)

2位 セネガル(4、+1)

3位 コロンビア(3、+2)

4位 ポーランド(0、-5)

日本は最終戦ポーランドに勝利or引き分けで無条件で決勝T進出が決まり、もし負けても2位のセネガルの結果次第で突破が決まる大いに有利な状況だった(セネガルが勝利すれば日本も予選通過。引き分ければ、予選敗退。コロンビアが勝てば、セネガルとの得失点差によって決まる)。そしてここまでの試合で勢いづいている日本には、まずこの試合で負けると予想するものは少なかった。

 

W杯前最後の壮行試合でパラグアイに4-2で勝利したメンバーをもとに構成されていたコロンビア戦・セネガル戦とは大きく変わり、攻撃陣を中心にスターティングメンバーを6人入れ替えた。メンバー変更した理由としては、主力の休養が考えられる。W杯は1か月の中で最大7試合続く。試合間隔も中3日ぐらいしかなく、しかも勝ち進むごとに相手のレベルは上がるため、このようにある程度勝ち進むことが決まっている状況では、メンバーを入れ替えれることも他の強豪国では多い。

しかし、今回は入れ替えたメンバーによって試合内容が良くなかった。まず、プレーにスピード感が失われている。もし攻めているとき、日本人はきれいに攻めてゴールを決めたがる。そのせいか、シュートが打てるはずなのにキープしている、打たずにパスしたというケースが多かった。

そして後半14分、ポーランドのFKから足で合わされ先取点を与えてしまう。0-1。一方のセネガルvsコロンビアは0-0でこのままいくと、日本は予選敗退となる。ここまで必死の思いでグループステージ突破に向け視界良好だっただけに、焦りの色が見え始める。

しかし、コロンビアが後半32分にCKから先制点を決め、セネガルとの得失点差の勝負になる。スコアはこのまま動かず、日本が0-1で敗れ、セネガルも0-1で敗れた。問題のシーンは後半の35分過ぎだ。

 

重要な選択を迫られた日本代表

後半35分、残り10分の段階でセネガルとの得失点差の戦いになるが、ここでは互いの得失点差は̟±0、総得点も互いに4、お互いの直接対決も引き分けと甲乙つけ難い状況だった。レギュレーションでは、「フェアプレーポイント」という警告(イエローカード)の少なさで争うという聞き馴染みのない判定方法が用いられる。日本がここまで警告4回なのに対し、セネガルは6とここで日本が優勢になる。しかし、1点入るだけで大きく状況が変わるここで、いまひとつ効果的な手を日本の西野監督は打てずにいた。

 

何よりも「他力」でグループ突破を決めないといけないのが「プライドとして許さない」のがあった。ここまで勝ち点4でグループ首位、戦前の予想を大きく翻し、あと1点さえ取れれば自力での決勝T行きを決められる。日本人、漢ならば勝負をすべきだと、多くのサッカーファンは思っていただろう。

 

しかし、試合内容はとても同点ゴールを決められる雰囲気ではなかった。6人入れ替えた先発陣では攻撃の迫力を欠き、交代枠も3人までで効果的な戦術転換もできずにいた。さらに試合会場のボルゴグラードは現地時間19時前にも関わらず、40度近い容赦ない暑さが選手の体力を奪っていた。この段階で交代枠は残り1つ。攻撃的、守備的に舵を切るならこの交代のタイミングが全てだった。

西野監督は決断が早かった。後半37分に控えで温存させていたキャプテンの長谷部を投入し、中盤の人数を1枚増やして厚くした。同時に「このままのスコアで試合を終える」という西野監督のメッセージ付きだった。

 

スッキリしない結果に終わる

終戦勝っても決勝Tへ進めないポーランドは無理に攻める必要はなかった。むしろこの暑さの中、体力を消耗してカウンターを食らい同点にされる方が恥だった。それは、日本も同様だ。日本は最終ラインで攻めずにパスを回して時間を稼ぐ。ポーランドも無理にはボールを取りに来ない。次第に会場からはブーイングが鳴り始める。お互いの状況を気遣うその様は、このブログでも用いられている「忖度」と揶揄された。

一方の同時進行していたセネガルvsコロンビアの試合はセネガルが猛攻を仕掛け続ける。このままいくと予選敗退のセネガルは勇猛果敢にコロンビアゴールを狙い続ける。いつ点が決まってもおかしくない状況だった。

試合はこのまま終わった。日本がポーランドに0-1で敗れ、コロンビアがセネガルに1-0で勝利した。最終的にグループHは1位がコロンビア、2位が日本という結果になった。試合後のインタビューでも西野監督は「戦略的なものだった」と終盤消極的になった試合を形容している。

 

完全に二極化したサポーター

試合を視聴していた多くのサポーターがつまらなさを覚えただろう。なんせ攻める気のないチームの応援なんて正直したくないし、いうなれば戦場で敵に背を向けて後退の陣をとっているそんなありさまだろう。

 

試合後、徐々に日本代表の戦いを擁護する声が出てき始めた。私も正直、攻めない形をとった日本代表の試合ぶりに落胆はしていたが、同時に仕方がないという思いもあった。まずは、偽善でなぜ最後まで攻めなかったのかと煽るサポーターには落胆していた。

 

実は日本代表の試合で同様のケースがあったのはこれ限りではない。昨年のU-20W杯(バルセロナの下部組織でプレーする久保建英やオランダで活躍する堂安律が活躍し、ベスト16に進出していた)で、予選リーグの最終戦、イタリアと対戦していた日本は、堂安のゴールなどで2-2と善戦していた。この試合は、イタリアも日本もこのままのスコアで行けば、決勝Tに進める状況で、むしろどちらかがゴールを決めると決められた方が予選敗退する可能性を残していた(参加24チームを4チームずつ6つのグループに分けており、グループ3位になっても予選突破の可能性があった)。日本のここまでの戦績では、次のラウンドに進む条件を満たしており、強豪イタリアにも引き分けで善戦しているなかで体力の消耗は避けたかった。

互いに無理して攻めない試合内容に、このときも会場からブーイングが起こったが、選手たちは何食わぬ顔でプレーした。彼らは決勝T1回戦でイングランドと対戦したが、0-0のPK戦の末敗退となったが、このあとイングランドは優勝を果たした。さらに唯一得点を挙げられなかったのが日本戦で、さらにPK戦までもつれたのも日本戦だけだった。要は、当時のイングランド代表をもっとも苦しめていたのは、まぎれもなく前の試合で「忖度」を行った日本代表なのだ。

 

このような経緯があったからこそ、私は今回の日本代表の戦い方は否定しなかった。むしろ正しい選択だった。

 

何か重要なことを忘れていないか?

しかし、この忖度討論をここで終わらせるのは聡明ではない。なんせ、本当の戦いはここからなのだ。まず、「日本代表よくやった」と称賛するには早すぎる。

 

まず、主力を温存させてまで戦った故に、決勝T1回戦のベルギー戦はフレッシュな状態で戦える(守備陣は休みなく戦うことになるが、少なくとも攻撃陣の疲労は軽減されているはずだ)。お世辞にも褒められる試合を見せられなかった西野監督の戦術だったが、戦略が功を奏している。だからこそ、コロンビア戦・セネガル戦のメンバーに戻し、サポーターに恥ずべきでない試合をするべきだ。次はトーナメントで、目の前の相手のことだけを考えればいいので、前述のような無駄な忖度は必要ない。

 

もう1つサッカーファンでも忘れている人もいるだろうが、日本代表には「2050年までにW杯で優勝する」というJFAの目標がある。トルシエ監督のもと、日本中が熱狂した’02年の日韓ワールドカップ、岡田監督のもと逆境をはねのけベスト16に進んだ’10年の南アフリカワールドカップ、あれから日本はまだベスト16の壁を破れていない。途中、代表の成績が振るわない、世界各国の脅威を目の当たりにし、委縮する時代も見受けられたが、課題はあるものの現段階で日本のサッカーが他の国に完全に劣っているのだろうか。完全に劣っているような国が、ベスト16に進めるのだろうか?

今、多くの日本代表選手は欧州のトップリーグで、常に世界の最前線の戦いで磨きもまれている。守備陣も長友、吉田、酒井宏を中心にワールドクラスの選手と互角に戦える実力を身に付けている。以前、本田が「個の力」の欠乏を嘆いていた時代もあったが、代表選手のほとんどが海外選手で構成されている昨今は、確実に個の力は向上している。ワールドクラスの進歩に後れをとることもあるかもしれないが、今その後れを取り返す絶好のチャンスだ。

 

評価するのはまだ早い。次の試合をしっかり応援すること

対戦相手のベルギーは確かに強い。各ポジションにワールドクラスの選手が集い、とても簡単に勝てる相手ではない。しかし、ベルギーも最近FIFAランクが上昇して世界の強国に仲間入りしているだけで、W杯での優勝経験もない。今大会の勝ち上がりも危なげがないが、それゆえに慢心もあるはずだ。ここまで無失点で勝っているだけに、先取点をとれば慌てふためくシーンが目に浮かぶ。

ベルギーとは通算成績も日本の2勝2分1敗と勝ち越している。最近の試合では去年0-1で敗れたものの、’02年の日韓W杯では2-2で引き分け日本にW杯初の勝ち点を献上してくれた縁起の悪くない国だ。

 

何よりも日本は8年越しで過去のW杯の成績を覆すチャンスを得た。ここまでもそうだが、チャレンジャーなので失うものはなにもない。もし、無様な試合をして西野監督の采配に泥を塗ることがあっても、少なからず今後の日本代表の成長の糧になる。そしてもし主力が力を出し尽くし、ベルギーに勝つようなことがあると、日本国内が歓喜に包まれるのは間違いない。「忖度」なんて言葉は闇に葬られ、西野監督・日本代表に称賛だけが与えられるに違いない。

 

主力の1人の香川は、よく自らを鼓舞すべくSNSで「#さあここからや」というハッシュタグをつけていた。今、その言葉を日本から遠いロシアで戦う彼らに発信すべきだろう。

 

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