ディズニーランドの顧客満足度は下がっている?
先日こんな記事を見つけました。
ディズニーランドといえば、オリエンタルランドが経営するテーマパークでその人気は日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと世界中へと広がってます。売れ行きも好調で2004年以降、売り上げはリーマンショックや東日本大震災の影響で一時鈍化している面もあるものの、基本的には右肩上がり、また営業利益は2004年に比べ10年間で3倍、当期純利益は4倍にも成長しています。いまだ勢いの衰えない日本を代表するテーマパークの名に恥じない経営状況です。
しかし、2016年4月から料金の値上げを決定しました。入場料金をおよそ500円ほど増やしたのです。さらにイベントの集客力が仇となり、アトラクションでの待ち時間やフードコートでの行列が増え、「常にどこいっても場所取りをしないといけない」ぐらい大盛況なのです。結果的に、「値段は上がるし、常に待たされる」という顧客心理にマイナスイメージを与える結果となっています。
■日本のテーマパークは寡占市場
ディズニーランドと並んで今、日本で人気のテーマパークは大阪のユニバーサルスタジオジャパンでしょう。ここ数年で経営戦略を転換し、ハリーポッターやワンピースとのコラボなど、以前のハリウッドでの映画作品のアトラクションから、日本や世界のあらゆる有名作品とのコラボレーションを実現し、急激なファンの獲得を実現しました。
同時に毎年話題性のあるニュースを提供しているのも、顧客を飽きさせない魅力です。2014年にはハリーポッターのエリア新設、また今年は往年の名作のジュラシックパークのアトラクションのリニューアルを控えており、その勢いはとどまることを知りません。
また富士山のふもとにある富士急ハイランド、名古屋の長島スパーランド、福岡のスペースワールドなど(本当はもっとあるはずですけどここは割愛)、日本にはブランドイメージの強いテーマパークはあるものの、やはり両者に追いつくものはなかなかありません。両者が互いに刺激しあい、ライバル関係を構築することは双方にとっても良いことですし、日本国内の経済あるいはインバウンドの面においても大きな効果をもたらしています。
■顧客満足と売り上げという相反する関係性
私はユニクロでアルバイトをしてきて、ある意味社員と同レベルで店舗を支えてきました(笑)店舗運営と一緒に考えるのはナンセンスかもしれませんが、正直
「CSと利益をどちらもとるのは難しい」
というのが正直な感想です。
例えば、顧客を待たせない接客やサービスの提供には、人手が必要です。行き場の困った人に案内をする、体調の悪い人のサポートをするのは、従業員として必ず行うべき企業としての責任があります。もちろんユニクロでもテーマパークでもそうですが、助けを必要としている人に対して、従業員の割合が少ないというのが現状です。しかし、人手を増やすことはそのまま人件費の増加につながります。人件費の増加はそのまま経費の増加で、利益の減少につながります。現存する企業のすべての目的は「利潤を増やす」ことに他なりません。ゆえに、顧客満足を人で補おうとすると経費がかかり、利潤の減少を引き起こすという相関関係が生まれるのです。
これは業務形態によって異なります。ただ単に人を増やせばサービスの質が上がる訳でもないし、従業員の成長によりマルチタスクをこなせれば、解決できる問題も多いと思います。ただ、接客という面ではペッパーなどの人工知能による対応がまだ見込めない以上、量的人時を増やすのが得策です。
■まず大切なのは「内側」
企業に対する考えは各個人によって異なるものでしょう。「顧客主義」を謳うBtoCの業態であれば、自分たちの身を削ってでも顧客に尽くすことが求められるし、公的機関やその委託事業では、顧客のことではなく、社会にとってそれが正しいかどうかを求められる事業も存在します。
しかし、どの企業・組織にも「従業員」は存在します。どんなにその事業が魅力的なものであっても、従業員がやらなければ0と同じです。よって企業は自分たちの従業員の生活を守り、企業のために働くことが求められます。残酷なことに、生活を守るというのは、愛や奉仕といったメンタル的なものだけでは成り立たず、お金や地位といった実質的なものへのアプローチがなければどうしても靡かないものでしょう。
■ディズニーができること
こうなると、顧客という本来迎えるべき人のために行動するのか、企業という自分たちのために行動するのかという原則が崩れかねません。これは、ディズニーやユニクロに限らず、すべての企業や組織で当てはまるでしょう。
ただ、ディズニーには「来てもらった顧客(ゲスト)に夢を与えることができる」という他の企業にはない強みがあります。こればかりはユニクロでも実現することはできません。1度でも行ったことがある人はわかると思いますが、あのテーマパーク内だけは現実を忘れ、夢の中にいるような感覚に陥ります。私たちのブランドイメージがそれを下支えしているのです。はっきり言ってしまえば、少々値段が上がろうとも、行列に並ぼうとも、夢を与えられるような異次元の空間は他には味わえない訳で、それが確固たる差別化につながるのでしょう。
一時的な顧客満足の低下に憂いるのではなく、日本を代表するテーマパークであるからこそ、長期的な視点が求められるのではないかと思います。